橋倉家住宅 活用に道筋 江戸後期の武家 松本市の旧城下町 読書会や作品展示

松本市内に現存する数少ない武家住宅の一つ、橋倉家住宅(旭2)の活用に道筋が付いてきた。県宝に指定されているが、博物館施設の位置付けはなく、在り方は課題だった。市教育委員会が昨年度から修繕や学術調査を行う一方、素朴で落ち着いた雰囲気の屋内で地元住民や大学生が講座などを行い「ほどよい活用」が定着しつつある。
橋倉家住宅は、旧城下町エリアの北東にある江戸後期の下級武士の家で、平成14(2002)年に市が寄付を受けた。主屋は間口11・8メートル、奥行き12・7メートルの切妻造で、上座敷、下座敷、通し土間などがある。改築の痕跡はあるものの、当時の形式をよく残している。
ただ数年前まではコロナ禍もあって利用されず、ほこりをかぶっていた。市文化財課は「このままでは傷みが進む」と昨年度に手入れを開始。学術調査では梁に墨書きを発見し、それまで不明確だった建築年が、周辺一帯で大火災があった翌年の嘉永3(1850)年と判明。古文書の紙を壁紙代わりに再利用していたことも分かった。
一方で、毎年掃除する住民たちも「見るだけより活用した方が傷みも少ない」と提案。安原地区まちづくり協議会文化部会は2年前から上座敷で読書会を開いている。部会長の澤栁清一さん(74)は「広い畳の部屋は雰囲気が良く、落ち着いて本を読める。評判はいい」と話す。近くの信州大学も講義や作品展示に使っている。
市教委が毎年開く見学会には、3年間で延べ約200人が参加した。文化財課の小林一成さん(42)は「ここ数年で橋倉家の環境はかなり良くなった。簡素が求められた武家住宅を知ってもらう活動を、長い目で続けていきたい」と話している。