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コロナ禍経て葬儀様変わり 告別式後の火葬増える

 新型コロナウイルス禍を経て、葬儀の形が変化している。葬儀・告別式に先立って火葬をする中信地域で多い「骨葬」に代わり、葬儀・告別式の後に出棺して火葬する、全国的に主流の方法を選ぶ人が増えている。背景にはコロナ禍中に一度も顔を見られないまま亡くなってしまった人に最後の別れをしたいという願いがあり、感染症の流行が地域の習慣に影響を及ぼしている。

 中信地域で12斎場を運営するアステップ信州(松本市埋橋2)は昨年7月から、葬儀・告別式後に火葬する新しい葬儀「はなえみ(花笑み)の儀」の提案を始めた。以前から要望はあったもののコロナ禍でさらに高まり、現在では同社で扱う葬儀の4割近くを占めるまでになった。葬祭営業部の池田太郎部長は「出棺の時に花や故人の愛用品を入れたり会場に好きだった音楽を流したりと、思い思いのお別れができる」とメリットを話し「心のこもった温かい葬儀をお手伝いしていきたい」と話す。
 同じく中信地域でJA虹のホールなどの斎場を展開するJA長野県グループの長野エーコープサプライ(長野市)も「火葬前に告別式をしたいという要望自体は以前からあったが、最近少しずつ増えている」と語る。
 平成30(2018)年に、地域の葬儀に関する企画展を手掛けた豊科郷土博物館(安曇野市豊科)の学芸員・宮本尚子さんは、そもそも中信地域がなぜ骨葬なのかという理由について「この地域で『棚上げ』と呼ばれる精進落としまで葬儀当日に終わらせ区切りを付けるため、告別式の前に火葬をするようになったのでは」とみる。
 移動が制限されたコロナ禍中は「死に際に会えない」という問題が世界中でクローズアップされた。宮本さんは「コロナ禍の少し前から家族葬や近親者のみの葬儀が増え始め、葬儀自体が縮小傾向にあった。そこにコロナ禍が加わった。葬儀の形が変化する時期を迎えている」と話している。