連載・特集

2023.11.8 みすず野

 暦は霜月になり、年賀はがき発売の記事が紙面に載っても、上着がいらない、日中は半袖で過ごせるような日が続いた。稲刈りが終わった田んぼには、30センチほどにも伸びたひこばえが青々と広がっている。それでもきょうは「立冬」だ◆冬への歩みはずいぶんゆっくりしているようにみえるが、市街地の木々は色付いている。松本市水汲のキッセイ文化ホールや市民総合体育館周辺のイチョウは、見事な黄色に模様替えして、真っ青な空に映えていた◆英文学者の福原麟太郞は、昭和27(1952)年に「昔よりも日本は暖かになったのであろうか」と書いた(『福原麟太郞随想全集3』「小春日和」、福武書店)。「天長節」と呼ばれた11月3日は祝日で、朝早く小学校の式に行った。「そこいら一面、霜が下りていたものだ」と回想する。この年の2日は「申し分のない小春日和であった」◆70年余り過ぎて、さらに暖かくなっているのは間違いない。寒いのは苦手だが寒い季節は寒くないと、人の営みにさまざまな支障が出る。それは自然の世界でも同様だ。いつも遅れがちな暮らしの準備だがゆっくり進む季節に感謝しながら冬支度。