連載・特集

2023.11.7 みすず野

 阪神タイガースが日本シリーズを制覇して明けた昨日の朝、それを祝福するように、東の空は真っ赤な朝焼けだった◆野村克也監督当時のヘルメットをかぶり、タイガースカラーの法被を着て、選手の名入りタオルを首に巻き、バリトン歌手・立川清登の歌う「六甲おろし」に声を合わせて歌いながら出勤することはしなかった。38年の歳月でその程度の分別は身につけた◆机上には、タイガース仕様の国語辞典が1冊だけある。帯には「すべての阪神ファンに捧ぐ!」とあり、「六甲おろし」1番の歌詞が記されている。本文はこの仕様独自の三つのオリジナル用例が赤い文字で掲載されている。「甲子園」にはそのうちの一つ「阪神ファンの聖地である」の用例が載る。発刊は5年前◆この辞典で「歳月」を引いてみた。「としつき。年月」とあり「歳月人を待たず」の慣用句を載せ、その意味は「年月は人にかまわずどんどん過ぎてゆく」(『三省堂国語辞典第七版』)。38年は岡田彰布監督とほぼ同世代としてはこれまで生きてきた歳月の半分以上になる。決して短くはなかった。それだけに喜びも深いのだ。これからゆっくりかみしめよう。