2023.11.6 みすず野
庭のナツメの木に黄褐色の実がなっている。山のドングリは不作で、それが各地で熊が出没する原因だともいわれているが、わが家のナツメは近年にない豊作で、枝の先まで隙間なく実が並ぶ◆根元を見ると、リンゴを丸かじりしたように食べた実が落ちている。野鳥の仕業だ。母は毎年、ナツメの果実酒を造ってくれた。冬から春先まで、おやつ代わりに食べたことを思い出す。もう20年近くあの味とご無沙汰だ◆樹木の図鑑を調べたら、日本最古の現存薬物辞典『本草和名』(918年)にも記述があり、古くから食用、薬用として栽培されてきたそうだ。夏になると芽を出すことからこの名前が付いた。茶道で茶入れを棗と呼ぶのは、形が実に似ていることによるためという◆色づいた実はそのままかじっても、リンゴのような味がしておいしい。地面に落ちた実は、春に芽を出すのがやっかいだ。小さいとはいえとげをもっている。木はずいぶん大きくなって、脚立に乗るだけでは先端まで届かない。ひと冬分の果実酒なら、手の届く範囲の実があれば十分だろう。木に残った実は、冬に餌が乏しくなる野鳥へ進呈することにしよう。