連載・特集

2023.11.22みすず野

 本年度が地元の寺の役員任期最終年度にあたり、先日ほぼ全員が京都市内にある宗派総本山へ行き宿坊に泊まった。朝の勤行を体験するのが目的で、まだ真っ暗なうちからお堂に集合した◆小学校の体育館より大きいと思われる堂内には、50人ほどの僧侶が列になって仏像の前に並び一斉に経文を唱えた。その声は圧巻で、体を揺り動かされているようにも感じた。出入り口は開け放たれ、冷たい風が通り過ぎる。コートを置いてきたことを後悔した◆勤行の後、宗派の頂点にいる90歳近いという管長が、韓国からの僧侶たちや一般参拝者を含め約50人を前に「私たちの命は、大昔からきょうまで続いてきた命」という意味の話をされた。次の言葉の前に、ほんのわずかな間があった。その時、何の前触れもなく、ガザで命を奪われた人々への思いが募った。そこにいた人たちも、同様の思いを抱いたのではなかろうか。確実な何もないけれど◆お勤めを終えて明るくなった外に出ると、京都の紅葉は随分遅れていると案内してくれた僧侶が話してくれた。見上げた先には大きな虹が架かっていた。京都も、ガザも、松本も、同じ空の下にある。