連載・特集

2023.11.19 みすず野

 きょうは一茶忌。江戸時代の三大に数えられる俳人の小林一茶は信州出身の人だが、北信濃が拠点だったため、残念ながら松本方面に足跡があまり見られない。それでも、つながりのある句碑が松本市浅間温泉に立つ。大正から昭和の俳壇で活躍し、自由律俳句を提唱した荻原井泉水のそれだ◆石碑が立っている場所にかつてあった鷹の湯の改築を記念し、井泉水が鷹の湯に句を贈り、その作品をもとに昭和50(1975)年に句碑が建立された。東京都在住の井泉水が鷹の湯まで遠路来所したのは、一茶の作品・関連資料を見るのが目的だった◆井泉水は、一茶の研究者という顔も持つ。鷹の湯や、やはり浅間温泉にかつてあった温泉旅館の西石川が、一茶の物をたくさん持っていて、いずれもみな見せてくれる約束になっていたのだという。井泉水が残した「松本にて」という文書の中に詳述されている◆一茶の句は、苦労続きの人生を代表した作品や童謡を想起させる作品が多くて今でも人気が根強い。代表句を紙幅まで。〈やせ蛙まけるな一茶これにあり〉〈名月をとつてくれろと泣く子かな〉〈雀の子そこのけそこのけお馬が通る〉