連載・特集

2023.11.14 みすず野

 酒席のさかなの一つが悪口であることは酒場で一人、カウンターの端に座っていればよくわかる。その対象が会社の上司などだとつまらない。相手が大物であればあるほど、悪口の言いがいがあるというものだ◆では誰がいいだろうと考えると、やはり一国の首相ではないか。相手にとって不足はない。うまく悪口を展開できれば、酒場を巻き込み、あるいは酔客が自説に耳を傾け、そのユーモアで一場に笑い声がこだますかもしれない◆問題は、その首相が悪口に耐えられるかという点。罵倒するのでなくひねった部分も入れ、微苦笑してもらう内容にできるかどうか。戦後の首相でふさわしい人物となると、田中角栄で満場一致だろう。では現在の首相はどうか◆衆議院の年内解散はしないと表明して方々で袋だたきに遭い、任命した財務副大臣は、税理士資格を持ちながら税金の滞納で4回差し押さえをされたと明らかになり辞任。報道機関の世論調査で政権支持率はその度に下がり、結果が報じられると「支持している人がまだそんなにいるの」というのがあいさつ代わりになっている。これじゃあ気の利いた悪口の言いようがないよ。