連載・特集

2023.11.1 みすず野

 「山崎貴展閉幕」の記事が掲載された日、テレビのニュース番組に山崎監督が映っていた。見覚えのある場所だなと思って見ると、岡谷市役所の旧庁舎だった。山崎監督の最新作「ゴジラ―1.0(マイナスワン)」の撮影に3日間使われたそうで、公開を前に訪れたという◆建物内部が映し出され、懐かしさに思わず見入った。駆け出しのころ、取材で毎日のように足を運んだ。2階が映っていたが、ここには市長室、市長応接室、企画、秘書、財政、庶務の各課などがあった◆岡谷市は昭和11(1936)年、日本一の大村だった諏訪郡平野村が、町を飛び越えて市制を施行した。同時に地元の製糸家がこの庁舎を寄付した。当時の製糸家の財力を知る話。国登録有形文化財だ◆旧庁舎は90年近い時を経て、今も変わらず建つ。市のホームページは「市のはじまりから現在にいたるまでそして未来へともに歩み続ける市のシンボル」と記す。建物はその街の人々と生き続ける。けた違いの歴史を誇る松本城を見ればわかりやすい。破壊されるために建つのではない。ましてや兵器の標的になどなってはならない。医療機関ならなおさらだ。