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塩尻の地域おこし協力隊員 木曽漆器職人を目指し奮闘

小坂さん(左)が営む工房で、木曽漆器の職人を目指して修業する竹内さん

 塩尻市の地場産業である国指定伝統工芸品・木曽漆器の職人を目指す地域おこし協力隊員として、福岡県那珂川市出身の竹内桜咲子さん(24)が今月着任し、木曽平沢で修業を始めた。産地の存続・発展に向けた市の職人育成事業で、竹内さんは漆器職人・小坂進さん(68)の工房で日々仕事をしながら技術の習得に努めている。

 竹内さんは工房で、塗り物の基礎となる下地から塗りまで一連の作業を手掛ける。これまで漆塗り経験があり、小坂さんが1回説明し手ほどきすればすぐにできる。25日も、世間話をしながら盆などに生漆に地の粉を混ぜへらで付ける「地付け」作業をした。小坂さんは「積極的で、頼もしく思う。地域も後継者不足に頭を痛めているので、一人でも職人が増えていけばありがたい」と話す。
 高校まで福岡で育った竹内さんは、美術が好きで京都の伝統工芸の専門学校で漆を専攻した。卒業後は漆器の産地・石川県輪島市内の会社に就職し下地職人として働いていたが、今回の求人を知り志願。15人の応募者から選ばれた。師匠の小坂さんは、40歳から3年間、京都・金閣の修復に従事した文化財修復作業の経験もある。竹内さんは小坂さんの人柄にも魅了され「教わりたい」と思ったという。
 自分で作って直すことができ、ガラスや金属とも相性が良いのが漆の魅力だと感じている。京都、輪島、木曽平沢とそれぞれ少しずつ技法が異なり、竹内さんは「臨機応変にできれば。展示会に出す自分なりの仕事もしていきたい」と語る。
 木曽漆器工業協同組合によると、産地内の職人は70人程度で、このうち20代以下は数人。地域おこし協力隊制度を活用した職人育成は初めてで、隊員は市の会計年度任用職員だ。3年後には産地企業への就職または漆器関係の起業を目指す。