連載・特集

2023.10.3 みすず野

 秋の長雨を言う。〈秋霖〉という言葉を「元ウェザー・キャスター」有賀淳さんの著書『お天気歳時記』(MDU出版会)に教わった。季語に〈秋入梅〉があり、9月半ば過ぎから10月初めにかけて〈いったん降り出せばいやというほどたっぷり降る〉◆秋霖の時季なのに...降っても2日と続かない。これも受け売りだが、長雨を降らせる秋雨前線の〝昔の名前〟は梅雨前線。夏の間は北の果てに押し上げられていたのが、シベリアの寒冷な空気に押し戻されて列島まで下がってくる...はずなのだが◆秋の雨は昔から詩歌に詠まれ、風雅の人々を物思いにふけらせてきた。〈三日降れば世を距つなり秋の雨〉水原秋桜子。一方で台風と重なって大きな災害をもたらすこともある。降ったら降ったで「もうたくさん」となるけれど、それでも降るべき時に降らなければキノコをはじめ秋の恵みへの影響が懸念される◆プロフィルによると、毎日新聞の気象解説コラムも長く担った有賀さんは上伊那郡辰野町の生まれ。気象エッセイスト倉嶋厚さんも信州の人なのは季節感豊かな土地柄ゆえか―と想像し、きのうも降りそうにない青空を見上げた。