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視覚・聴覚障害者も舞台鑑賞しやすく 市民芸術館がサポート導入へ

実演を交え、能と琵琶について紹介したアウトリーチ

 松本市のまつもと市民芸術館(深志3)は、11月に上演する舞台「能でよむ~漱石と八雲~」で、視覚や聴覚に障害のある人たちへの鑑賞サポートを導入する。来年度、芸術監督団の団長に就任する参与・木ノ下裕一さん(38)による初めての企画で、今後、来場者の裾野を広げる取り組みを進めていく。

 公演は11月25日午後2時から同館で開かれ、木ノ下さんの解説を交えながら夏目漱石と小泉八雲の作品世界を能独特の節回し・謡と浪曲、琵琶でよみ解く。同館としては初めて、開演前と木ノ下さんの解説で舞台セットなどの様子を紹介し視覚情報を補うほか、手話や字幕で語りの内容を伝える。
 取り組みの一環として8日、県松本盲学校でアウトリーチ(出張公演)が行われた。本公演に出演する能楽師・安田登さん(67)や木ノ下さんが来校し、耳から楽しめる内容を重視して謡や琵琶奏者の演奏を実演。あん摩マッサージ指圧師などの国家資格取得を目指す理療教育部の生徒や教職員ら約20人が参加し、琵琶に触れたり、有名な「高砂や」の一節で謡を体験したりと古典芸能に親しんだ。
 3年の牛山剛さん(53)は「琵琶の音や声に魂を揺さぶられるようだった」と感動し、「これまで芸術館も能も縁がなかったけれど、公演に行ってみたくなった」と話していた。
 木ノ下さんは、あらためて誰もが文化芸術に親しめるサポートの用意に意欲を示し、「皆さんの元へ出向くことも含め、楽しみを分かち合える劇場にしていきたい」と力を込めた。「能でよむ」のチケットは同館で扱っている。