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松本・横田地区の"守り神"大ケヤキ 空洞化進み苦渋の伐採

伐採前の大ケヤキ(左写真)と大きな空洞が見える伐採した幹の中(右写真)

 松本市横田4の横田神社境内にある、樹齢300年を超えるとみられる大ケヤキが5日、伐採された。根や幹の腐朽が著しく空洞化が進んでいると考えられることから、幹折れの危険性が高いとして、悩んだ末に氏子総代会が伐採に踏み切った。地域住民が集まり、"地域の守り神"として愛された木の最後を見守った。

 早朝から始まった作業では、最初に高さ20メートルの木の上部に茂る葉を切り落とし、次に上の方から幹を輪切りにしていった。請け負った柳沢林業(松本市岡田下岡田)の職人がロープを付けて木に登り慎重に進めた。ケヤキは樹皮のすぐ内側に水や養分を運ぶ組織があるため、中が空洞でも生き続けられる。伐採した幹の中も大きな空洞になっていた。樹勢は良好だったため、上部の葉が茂れば茂るほど重くなって、幹折れする可能性が高かったことが確認された。
 同神社は元禄3(1690)年の建立で境内にケヤキの古木が立ち並ぶ。今回伐採した木は建立当時からあったとみられ、腐朽が進んで怖いと住民からたびたび相談が寄せられていた。これを受けて昨年夏、樹木医の根萩達也さん(68)=松本市里山辺=に診断してもらうと「幹折れの危険性が高い」という結果となった。
 総代会では、切ってしまってよいものか悩みに悩んだというが、台風シーズン前になんとかしなくてはと今年に入って一念発起。関係する5町会に協力を要請し、7、8月に寄付を集めて今回の伐採に至った。
 前日の神事から作業を見守った総代会長の埴渕秀裕さん(71)は「寂しいね。涙が出る」としつつ「倒れて大きな被害を出す前に伐採できて結果的によかった。これで不安を抱えて過ごさずにすむ。一つの区切りになった」と話した。
 伐採した木の端材で記念の品を作り、神社に飾って地域住民にケヤキのことを語り継いでいきたいと考えている。