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「映画の街」盛り上げた音楽たち ジョン・ウィリアムズさん作曲

「中劇から宇宙のかなたへ飛べ!」「あなたも空を飛べる!スーパーマン」。当時の市民タイムスに掲載された中劇の広告。独自の宣伝文句が目を引く

 「E.T.」に「スターウォーズ」、「スーパーマン」─。これら大ヒット映画の音楽を作曲した巨匠ジョン・ウィリアムズさん(91)=米国=が2日、国際音楽祭セイジ・オザワ松本フェスティバルに指揮者として登場する。6作品(シリーズは1作品換算)の曲を、サイトウキネンオーケストラ(SKO)が演奏する。作品が公開されていたころ、松本市街には8館の映画館があり「映画の街」といわれていた。当時の館主に思い出を聞いた。

 6作品全てを上映したのは、縄手通りにあった松本中劇だ。館主だった藤本豊久さん(77)=女鳥羽3=は「映画音楽は添え物という印象があったが、ジョン・ウィリアムズの音楽は違った。比重が大きくて、映像と五分五分で作っていると感じた」と振り返る。昭和53(1978)年公開のスターウォーズ第1作は冒頭から有名なテーマ曲が流れ、巨大な宇宙船が登場する。「強烈だった。あの曲は忘れられない」と話す。
 マーチなど高揚感のある曲の印象が強いウィリアムズさんの音楽だが、藤本さんが1番好きなのは平成6(1994)年公開の「シンドラーのリスト」のテーマ曲だ。ナチスのユダヤ人の大虐殺を救ったドイツ人実業家を描いた作品で「悲しげなバイオリンのソロが素晴らしかった」。
 当時の映画館は、独自の宣伝に力を入れた興行をしていた。街中に映画ポスターを貼ったり、学校に割引券を配ったり、新聞広告も独自に掲載した。中でも藤本さんにとって、昭和57(1982)年公開の「E.T.」の興行が思い出深いという。市内では映画は1作品1館のみで上映するのが常だったが、E.T.は米国での大ヒットを受け、中劇と東宝セントラル(大手2)の2館での上映が決まり、2館の"闘い"は白熱した。
 女鳥羽川の千歳橋で東宝セントラルがE.T.のかぶり物を付け宣伝すると、中劇は即、ざるでE.T.の"頭"を作り同じ場所に立った。東宝セントラルの館主だった宮坂高尚さん(83)=県2=は「うちは宣伝カーがあったから、E.T.の曲を流して街中を走り回った。鍋で作った宇宙船を飾ってね」と当時を懐かしむ。
 藤本さんは「小澤征爾さん、SKOがあるから、松本に来てくれるんだね」と感慨深げに話す。