連載・特集

2023.9.9 みすず野

 厳しい残暑はなかなかおさまらない。今月も中旬になる。そろそろ暑さから解放されたいという思いは、高齢者ほど強いのではないかと推察する。夏は確かに好きな季節だったが、こんなに暑く、長く続くと、このあたりで勘弁しておくれと言いたくなる◆それでも、朝夕はほっとする風が吹き、秋は近くまできているようではある。あちこちから、虫の声もにぎやかに聞こえてくる。里山では、黄色くなって実った頭を下げる稲穂の上を、トンボの群れが飛び交っている◆人のうちにも虫がいるようで、体内のどのあたりにいるのか知らないが「虫が好かない」などという。その程度なら仕方ないとも思うが「虫酸が走る」となると穏やかではない。虫酸とは胃酸のことだそうで、それがこみ上げるような、つまりひどく不快な状態をいう。そんなことをいわれないよう身ぎれいにしなくてはと、これでも年々気遣ってきてはいる◆「腹の虫が治まらない」のは、「虫の居所」が悪くてそうなるのだろう。近ごろ、この国のあれやこれやを思うと、どうしても腹立たしくて虫が暴れる。虫が元の場所に戻って静かになる日は来るのだろうか。