2023.9.6 みすず野
どうして〈ミョウガを食べると物忘れをする〉のか。とても不思議だと「口差点」にあった。ネットを繰ると、全くのぬれぎぬだとして同じ言い伝えが幾つも載っている◆周利槃特というインドの坊さんは教わったことをすぐ忘れてしまう。自分の名前も覚えられなかった。托鉢に出てもお布施をもらえないので、お釈迦様が名前をのぼり旗(名札や板とも)に書いて持たせてくれた。「名を荷った」ことにちなんで、周利の墓から生えてきた草が「茗荷」と名付けられ、ミョウガを食べると物忘れ―の俗説が生まれた◆自分の愚かさを嘆く周利に、お釈迦様は「愚かさに気付かない者が本当の愚か者だ」と説く。周利は教えられた通り毎日ほうきで掃除を続け、ついに悟りを開いた。同志社女子大学の教員コラムで、『天才バカボン』に出てくる「レレレのおじさん」のモデルでなかろうか―と読んだのも興味深かった◆落語や昔話の「茗荷宿」が俗説を広めたらしい。欲をかくと痛い目に遭う。栄養価が高くて冷ややっこの薬味や酢漬け、みそ汁の具...絵手紙の画題にもなる。ミョウガを食べるたび、ありがたいお説教を思い出すだろう。