連載・特集

2023.9.26 みすず野

 第12代の義晴は25年間も征夷大将軍の位にあった。有力大名の戦いに翻弄され何度も京都を追われながら、そのたび舞い戻る。山田康弘さん著『足利将軍たちの戦国乱世』(中公新書)を読んでの印象は「しぶといなぁ」だった◆応仁の乱が終わると群雄割拠の乱世になり、将軍は居ても名ばかり―強い者が勝ち残る「何でもあり」の時代だと思っていた。なかなか、どうして。どの大名と組むか―自前の兵力が乏しい歴代将軍は悩む。大名のほうも将軍の権威を尊重し、外交を有利に進めるため利用した◆500年も昔のことを学んで役に立つのか―山田さんは現代の世界との類似を指摘する。主権国家の分裂と「天下人」の不在、国益を巡る対立と協調、国連の下でのまとまりや人権・平和の尊重といった共通の価値観...。過去を知ることは、身近すぎて見過ごしがちな現代への気付きを与えてくれると◆女性の直臣がいた!のもびっくりだ。佐子局は義晴に仕え、政務の場で立腹して〈苦々しきほどに〉いさめた。男の家臣が言うよりも効いたのに違いない。名前も知らなかった将軍や武将の人物像が本のページから立ち上がってくる。