2023.9.14 みすず野
先日ミョウガの語源となったインドのお坊さんが「レレレのおじさん」のモデル―との説を紹介したところ、読者から「寒山拾得の拾得ではないか」とお便りを頂いた。卑下するまでもなく浅学の筆者に難しい議論を吹き掛けられるのは弱るが、この種の"反論"なら楽しい◆書家の榊莫山さんは寒山拾得をよく描いた。ひょうひょうとした姿が古くから画題となり、文殊・普賢の化身(広辞苑)と言われる。〈いまいるとしたら、こんな顔〉と現代に引き寄せ、実在の人物とは思わないほうが〈気が晴れて、気分がよい〉と(『莫山日記』毎日新聞社)◆どの絵の中でも大抵にっこり、あるいはからからと笑っているものだと思い込んでいた。このほど訪ねた京都・大徳寺興臨院のふすま絵の拾得は、ラグビー日本代表・稲垣啓太選手みたいに厳しい表情だった。寒山に至っては―お経の巻物を広げているが―半身こちらに背を向け、やはり笑っていない◆冒頭のお説に戻ると、たしかに「おでかけですか、レレレのレ~」と言いながら拾得と同様ほうきで掃除をしているけれど、ならば相棒の寒山はどのキャラクターかという疑問が残る。