地域の話題

宮沢賢治への思い一冊に 安曇野・森のおうち 酒井名誉館長

著書を紹介する酒井名誉館長

 安曇野市穂高有明の絵本美術館「森のおうち」名誉館長・酒井倫子さん(85)の著書『宮沢賢治に魅せられて 賢治かぶれの森のおうち』(信州教育出版社)が発刊された。酒井さんが平成6(1994)年に開館した同館の運営のよりどころとし、「人生をつきうごかすエネルギー」としてきた賢治作品の世界観を読み解いた。

 平成15~17年に地元の情報紙に連載した計60回の原稿を再編集した。賢治の生前に唯一刊行された詩集『心象スケッチ春と修羅』は繰り返しその解釈を試み、冒頭の「序」について「普遍的な思想や芸術は人類の遺産として残されることを象徴的に語っている」などと記した。
 酒井さんは、戦後間もない小学4年生の時、担任の読み聞かせに感動した『風の又三郎』との出合いを「空腹も忘れるほどに魅了され、空想や想像を楽しみ、貧しさになえた心は開かれた」と振り返る。
 今年4月に館長を退任して以降も、長年主宰してきた「朗読教室」や「宮沢賢治教室」を継続し、「仲間たちとの学びを、賢治が作品に込める〝生きとし生けるものの生命の大切さ、平等さ〟を守る手だてとしていきたい」と情熱を絶やさない。
 A5変形判196ページ、定価1760円。問い合わせは森のおうち(電話0263・83・5670)へ。