空き店舗 憩いの場に 木曽町 福島本町の「竹安」 上松の中山はる代さん 疎開先開放 作品販売も

木曽町福島本町の店舗としても使われた空き家「竹安」が、住民や観光客の憩いの場として開放されている。上松町上松の中山はる代さん(83)が、戦時中の疎開で受け入れてもらった母方の叔父一家が住んだ。戦後にかけて厳しい時代を過ごした思い出の場所で、「家に風を入れるだけでも恩返しになるかな。続けられる限り開いていきたい」と考え、親族の理解を得て開放につなげた。
竹安はかつて、野菜や花の種、種芋などを販売していた。食堂も営んでいた。木曽川沿いに建つ崖屋造りで、木造3階建て。ショーウインドーがある昔懐かしい店構えだ。
終戦半年前の昭和20(1945)年2月、5歳だった中山さんは、母や祖母、姉の4人で横浜市から疎開した。当初は飛行機の音にそわそわしたが、横浜と違って空襲警報がほとんど鳴らない山あいの生活に安心感があったという。戦後は福島小、福島中、木曽東高と進み、地元で働きながら29歳で結婚するまで竹安やその周辺で暮らした。
暮らしが厳しかった戦中・戦後にかけて、自分たち家族を助けてくれた叔父との思い出は「あり過ぎる」という。最も印象に残るのは、仕入れた種を袋詰めするなど叔父の仕事を手伝った記憶だ。
叔父は、戦後も父親同然に接してくれた。中山さんは「現在まで生き残れたのは叔父さん、親族、近所の人の力があったからこそ」と語る。「ここで過ごした思い出は大きい。育ててもらった家への恩返しになれば」。昔のように人が出入りする竹安にすることが、叔父への感謝を表すことになると思っている。
不定期だが、冬が本格化する前の11月ごろまで、天気がいい日の午前11時~午後5時ころに開放する。店内では中山さんが手作りした着物のリメーク作品も販売している。