地域の話題

寄席の笑い届けて半世紀 松本落語会が10月に記念公演

50周年記念落語会に向けて準備を進める世話人会

 寄席の定期開催で笑いを届け、松本地域に落語文化を根付かせた「松本落語会」が今秋で50周年を迎える。第1次オイルショックに見舞われた昭和48(1973)年、不況下の地域を盛り上げようと有志によって始まり、松本市内のホールや寺院を会場に550回余の落語会を開催。高座に上がった噺家は延べ約2000人に上る。半世紀の歩みを振り返りながら一層の継承を願って、第1回と同じ日取りの10月21日に記念の落語会を催す。

 市内の舞台照明家、故・大島啓愛さんを中心に、すし店主、豆腐店主、そば店主ら地元有志が発起人として"船出"したのは48年9月だった。翌10月21日に本町のカワイホールで初回を開催。三笑亭夢二(現・夢太朗)さんら3人が高座に上がり、約80人が来場、木戸銭は300円だった。
 以来、月例で寄席を催し、101回以降は高砂通りの瑞松寺を拠点に。いまは亡き桂歌丸さんや三遊亭円楽さん、若き日の春風亭小朝さんら毎回多彩な顔ぶれで来場者を魅了してきた。同会大家を務めた故・池田六之助さんは発足15年記念誌『長屋の花見』で「他の都市にない"笑いの一夜"を続けられたことは、すべては人びとの善意によるものであった」と記している。
 平成26(2014)年の大島さんの死去、新型コロナウイルス禍による休会と岐路に立つ時期もあったが、存続を願う有志が世話人会を運営して継承してきた。子供からお年寄りまで、世代も立場も職業も超えて腹を抱える場の継続は噺家と客の双方を育ててきたという。百瀬澄之会長(66)は「本物に触れてもらうことで地方に落語文化を普及させてきた。これからも大勢に親しんでもらいたい」と話している。
 50周年記念落語会は10月21日午後1時半からMウイングを会場に、第1回出演の夢太朗師匠らを招いて開く予定で詳細を詰めている。問い合わせはいばらん亭(電話0263・32・3786=留守録)へ。