戦時体験者の記録を読み解こう 松本市文書館で2つの企画展

戦後78年となる終戦記念日を前に、松本市文書館(鎌田2)の平和資料コーナーで今月、戦前戦中の歴史を考える二つの企画展が始まった。「川島浪速と満蒙独立運動」と「名古屋市の軍需工場に学徒動員された松本市の旧制中学校生徒の記録」だ。戦争を直接体験した世代が減り続ける中、体験者が残した記録や歴史資料など計約100点を並べ、史実を客観的に読み解く必要性を伝えている。
「川島浪速―」は、満州事変や満州国樹立の先駆けとして語られる満蒙独立運動と、運動の先駆者だった松本出身の川島浪速、中国清朝の王女で浪速の養女の川島芳子らの未発表資料を中心に並べた。同館所蔵の小里家文書から見つかった浪速の書簡や、浪速が陸軍参謀本部に宛て送った情報の控えなどがある。
「男装の麗人」の異名で知られる芳子の直筆のついたて(個人蔵)も初公開された。どくろを描き「しゃかも美人もこの通り」と記した芳子の人柄をしのばせる。
同館によると浪速や関連の記録は限られ、一点一点の資料が貴重という。木曽寿紀専門員は「満州国の正当性の論理付けに利用された節もあり浪速の歴史的評価は難しい。一次資料に基づく事実の客観的な検証が今後一層求められる」と話す。
「名古屋市の軍需工場―」は、旧制松本第二中学校(現松本県ケ丘高校)の出身者が戦中の体験を表したイラスト約60点を紹介する。勤労動員に向けた松本駅出発の様子、動員先の就業風景、松本の片倉から慰問で差し入れられたタンパク源の蚕や空襲、検閲、玉音放送などが描かれる。
窪田雅之特別専門員は「生々しい体験を聞くことがいよいよ難しくなってきている。記録から学び、後世に伝えて」と話していた。いずれも9月3日まで。