政治・経済

信州F・パワー事業の中核担う 征矢野建材が民事再生法申請

信州F・パワープロジェクトで征矢野建材が中核となって塩尻市片丘に建設した木質バイオマス発電所

 県や塩尻市、信州大学などと連携し森林資源を有効活用する「信州F・パワープロジェクト」で、事業の中核を担ってきた征矢野建材(松本市笹賀)が9日、地裁松本支部に民事再生法の適用を申請した。民事再生計画の認可決定後に、綿半ホールディングス(HD、東京都)が事業を引き継ぐことも分かった。

 綿半ホールディングスが同日、征矢野建材とスポンサー支援に関する契約を締結したと発表した。民事再生計画で100%減資が完了すると同時に、新たに出資を行う方法で支援する。事業を継承し、信州F・パワープロジェクトの木質バイオマス発電所の燃料用チップ供給事業についても「行政と連携しながら安定供給に取り組む」としている。雇用は維持する方針だ。征矢野建材は取材に対し「弁護士に一任しているのでコメントできない」と話している。
 民間信用調査機関・帝国データバンクによると、征矢野建材の負債額は約65億円。信州F・パワープロジェクトで、同社も出資したソヤノウッドパワーが塩尻市片丘に建設した木質バイオマス発電所の完成・商業運転開始(令和2年10月)が当初計画より約3年半遅れ、先行して完成した木材加工施設の減価償却費負担が増加して債務超過に陥るなど経営が悪化していた。発電施設の完成後もチップの原材料となる間伐材などの調達が当初計画を下回り、苦戦を強いられていた。
 県信州の木活用課によると、午後4時すぎに征矢野建材の桜井秀弥社長から電話で一報があった。県はF・パワープロジェクトに補助金を出しており、原木の消費量などの報告は受けていた。同課は「当初の計画通りにいっておらず、目標に対して木材の利用実績が達していない状況については把握していた」とする。ただ、資金繰りなど詳細な経営状況については知り得る立場になかったとし「まずは詳細な情報を集めたい」と情報収集に追われていた。
 塩尻市の百瀬敬市長は「(発表の)事実を受け止めた上で、信州F・パワープロジェクトを県と連携してしっかりと前に進めていく」とコメントした。