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水神「まんどさま」無事戻る 安曇野の・鼠穴橋の南 工事で一時仮遷座

敷地が2メートルほどかさ上げされてご神体が無事戻ってきた「まんどさま」

 安曇野市穂高有明の県道有明大町線(山麓線)鼠穴橋の南側に祭られている水神「まんどさま」が、元の場所に無事戻った。県道バイパスの建設に伴って敷地のかさ上げが必要になり、ご神体が一時的に移されていた。地元の立足区(手塚敏徳区長)にとって、農業用水の確保に苦労してきた歴史を伝える大切な存在で、関係者が遷座を喜んでいる。

 角田朝壽宮司らによると、立足区は農業用水を穂高川(地元では中房川と呼ぶ)にほそぼそと頼ってきた歴史がある。大雨による増水で取水口が何度も流され、そのたびに困窮してきたという。
 まんどさまは少なくとも江戸時代から祭られており、立足区が管理・所有している。石の小さな社と石碑があり、まんどさまの北側にかつて取水した堰の跡が残っている。
 まんどさまの「まんど」の由来は諸説あるという。一つは、取水している場所が大水のたびに流されていたことから「千度も万度も水を見に行った」という説。もう一つは、かつては河床上昇で堤防に土盛りする必要があり、土盛りをすることを「まんど」と呼んだため。さらには、災害がないように「千度も万度も祈願した」ことに由来する。角田宮司は「先人の苦労がしのばれる。いずれも正しい」としている。
 敷地のかさ上げに当たり、今年5月にご神体を地元の立足諏訪神社に仮遷座し、工事後の7月30日に元の場所に遷座した。氏子総代代表の佐藤次郎さんらが祭事に尽力した。まんどさまのいわれを後世に伝えるため、この機会に石製の説明板を新たに建立した。
 まんどさまでは毎年4月にお祭りをして先人の苦労をたたえている。角田宮司は「今は水が潤沢なので忘れがちだが、歴史の一こまとして伝えていく義務がある」と語る。

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