連載・特集

2023.8.26 みすず野

 関東大震災が発生して、今年は100年になる。大正12(1923)年のことだ。死者・行方不明者は、10万人以上だと推定されている。その日、9月1日は、昭和35(1960)年に「防災の日」に制定された◆「ロボット」という言葉を自作の戯曲で生み出したチェコの国民的作家、カレル・チャペック(1890~1938)は、劇作家だけでなく『園芸家12カ月』(中公文庫)のようなエッセー、小説、旅行記など、多くの作品を発表している◆震災の発生を知り、遠く離れたヨーロッパの小国から「皆さん、お聞きいただきたい。地平線上に大きな不幸が起こった。寄付を募集する必要がある」というアピールを発信した。それは金や慈善事業、偽善的な同情ではなく「連帯、同胞愛、すべてがすべて一体なのだという単純で明快な意識」(『いろいろな人たち』所収「ゆれ動く世界」、平凡社ライブラリー)だと◆チャペックは、生涯、新聞記者として多くのコラムを書いた。同書の文章は温かくユーモラスな表現、穏やかな語り口で身近なテーマが多い。その中で、前出のような1編を読むと、新聞記者であったのだと実感する。