政治・経済

王滝が20日に創業50周年 永瀬社長に聞く「成長物語」

創業当初の帳簿を手に思い出を語る永瀬社長

 飲食店運営などの王滝(松本市笹賀)が20日、創業50周年を迎える。昭和48(1973)年に同市の裏町に小さなすし店として開業してから半世紀の間に、そば店チェーンを全国展開し、飲食店以外にワインや菓子製造などにも業態を広げる企業に成長した。創業者の永瀬完治社長(72)に、今に至る思いを聞いた。

 「やると決めたらやる」。信念としている思いの原点は、父を亡くして貧しかった子供時代にさかのぼる。木祖村出身で、中学生の時にスキー大会に出場したかったが道具はない。姉とためていた貯金箱を一緒に割って用品店に行ったもののお金が足りず、泣く泣く出場を諦めた。悔しい、大きくなりたいという思いはその後、自身を奮い立たせるばねになった。
 高校卒業後、製紙会社勤務を経て20歳の時にすし店で見習いを始めた。裏町で先輩が進めていたすし店の開業計画が頓挫し、自身にお鉢が回ってきた。当時の裏町は夜中でも人通りが絶えないにぎわいだった。まだ修業中で自信はなかったが、チャンスを逃したくないと、わずかな資金を元に開業した。
 ただ、10人が入れば満席という狭い店舗では通常の営業時間でやっていくのは難しかった。裏町でも珍しかったという午後5時から翌日午前5時までの夜通し営業を始めたところ、街に人があふれるという時流とも合って人気店になった。
 築地市場からの仕入れ開始、そば処小木曽製粉所の開業といった社業の分岐点となった判断は、裏町での開業を決意した時のように、チャンスを逃さないことを心掛けた。その気持ちを忘れないようにと、自身で記入した最初の帳簿は今でも大切にしている。「時代の流れについていくのがやっと。年か」と笑うが、「コロナで気付かされたことが多々ある。それをこれからも形にしたい」と意気込む。