地域の話題

紅葉鬼神伝説の案内板設置 安曇野 柏尾集落の出身者有志

案内看板と、看板を設置した柏尾出身者たち

 安曇野市明科東川手の筑北村境に、平安時代に活躍した武将・坂上田村麻呂が鬼退治をしたという「紅葉鬼神伝説」に由来する集落や史跡が点在する。鬼の頭と尾を埋めた「鬼首大明神」がある柏尾集落の出身者有志がこのほど、社殿脇に伝説を紹介する案内看板を設置した。集落の過疎化と出身者の高齢化が進む中、伝説を後世に伝えたいと願う。

 看板は縦1メートル、横約2メートルの金属製で、大明神の由来と周辺の地図が掲載されている。いずれも柏尾出身の唐澤良英さん(73)=明科中川手=が企画し、看板広告業・山広(松本市笹賀)の会長・山崎博志さん(71)=明科七貴=が自前で看板を製作・寄進した。
 唐澤さんや『明科町史』によると、筑北村境の物見岩に「紅葉鬼神」が住み着き、田畑を荒らしたり人をさらったりする悪事を働いていた。朝廷が派遣した坂上田村麻呂が岩州の肘かけ岩からかぶら矢を射て退治した。鬼は死んでも生き返るとされ、切り刻んで別々の場所に葬った。
 周辺集落はこの伝説にちなんで名付けられている。由来は諸説あるが、矢を作った場所が「矢本」、矢が越えた地点が「矢越」、鬼が泣く泣く逃げたという場所が「名九鬼(=泣く鬼)」など。鬼の頭と尾を埋めたという柏尾は「頭尾」が転じたとされている。
 柏尾周辺では年に何回か散策イベントがあり、そのたびに唐澤さんが伝説について模造紙で説明していた。旧国鉄篠ノ井線廃線敷遊歩道が近くを通っているため、イベント以外で歩く人も多い。唐澤さんは「この地を訪れる人たちに看板を見て伝説を知ってもらいたい。子孫にルーツを残したい」と語る。