2023.7.22 みすず野
「静かな朝だ。町はまだ闇におおわれて、やすらかにベッドに眠っている。夏の気配が天気にみなぎり、風の感触もふさわしく、世界は、深く、ゆっくりと、暖かな呼吸をしていた。起きあがって、窓からからだをのりだしてごらんよ。いま、ほんとうに自由で、生きている時間がはじまるのだから。夏の最初の朝だ」◆長々と引用したのは、米国のSF作家、レイ・ブラッドベリが若い世代のために書き下ろしたという長編小説『たんぽぽのお酒』(北山克彦訳、晶文社)の書き出しだ。夏の朝を迎えた少年の喜びがあふれている。何度読み返したことだろう◆詩人で作家の三木卓さんは「夏の夜は何時までも起きていたい。少年時代からそうだった。今も変わらない」と書いた(『青春の休み時間』集英社)。そして「さて、夏の夜である。ブラッドベリのどれを読もう」と続き、好きな作品のひとつとして前掲書を挙げている◆きょうから夏休みという小中学校もある。始まりがずいぶん早くなった。この暑さが連日続くのだから昔とは違う。今朝、うれしくて早起きした子どもは多いだろうか。笑顔があふれる夏休みになりますように。