2023.7.17 みすず野
初めて覚えた童謡は〈♪海は広いな/大きいな〉でなかったろうか。おもちゃの船を湯船に浮かばせて繰り返し歌っていた―ような気がする。海への憧れは〈♪行ってみたいな/よその国〉と育まれた◆太宰治の掌編「海」―〈私〉は5歳の娘に海を見せたくて、五能線に乗り込むや〈海の見える側〉の席に座る。声に出して読むとリズムがいい。〈海が見えるよ。もうすぐ見えるよ。浦島太郎さんの海が見えるよ〉―見えた!〈ほら!海だ。ごらん、海だよ、ああ、海だ。ね、大きいだろう、ね、海だよ〉◆小紙の先週14日付「探訪!フレンドタウン」に志賀島(福岡市東区)の金印公園で望む博多湾の写真が載っていた。船形の山車を曳く安曇野の人たちの父祖の地とされる。古代史を巡る謎は金印に刻まれた文字の読み方ひとつ取っても百家争鳴で、説は定まっていない(『現代「金印」考』龍鳳書房)◆世代にもよるだろうが、カラオケで海の歌といえば加山雄三さんの〈♪海よ俺の海よ/大きなその愛よ〉をよく聞く。サザンには何だか切ない詞も多い。夏はこれから。振り返るのは早い。希望に胸を膨らませる―きょうは海の日。