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認知症高齢者向け 麻績に「バスの来ないバス停」

「てとてと和合前」と書かれた架空のバス停を手作りした井澤さん

 NPO法人「なかまと」(大町市)が運営する麻績村和合の認知症対応グループホーム・てとてと和合の施設前に、手作りの「バスの来ないバス停」が設けられている。家へ帰ろうと思い立った認知症の高齢者が、施設を抜け出て行方不明となるのを防ぐために考案された欧州ドイツ発祥の「優しい嘘」といい、同施設のささやかなシンボルとして利用者や職員に親しまれている。

 高さ約1㍍の小さなモニュメントで、ガーデニング用の柵やポリバケツのふた、まな板を組み合わせてバス停そっくりに作られている。法人名と施設名にちなんで「なかまと交通・麻績線」「てとてと和合前」と記され、時刻表もそれらしく作られている。隣にはベンチがあり、来ないバスを待つ仕組みだ。
 同法人理事長の井澤泉さん(73)=塩尻市大門二番町=が国内外の事例を参考に考案し、昨年夏に手作りした。同施設に入所する9人の高齢者は、若い頃、電車やバスを頻繁に利用していた世代でもあり、設置後には実際にバス停と思って待つ入所者もいたという。
 井澤さんは「入所者がホッとした気持ちになれるスポットを作りたかった。昔を思い出すことで、周りの人との会話が少しでも弾めばうれしい」と願っていた。