上條信山の直弟子・大島武さん 書象展「俊英選抜」の5人に

松本市出身の書家・上條信山(1907~1997)の最晩年の直弟子で、市美術館学芸員の大島武(雅号・大島皎山)さん(55)=同市里山辺=が、信山が創設した書象会(東京都)の第62回書象展で「俊英選抜五人展」の出展者の1人に選ばれた。全国から1000点近い出展がある書象展において、若手や中堅から選抜された5人が大作を披露する場で、信山流の継承を託される。作品は15~25日に東京・六本木の国立新美術館に展示される。
大島さんが出展した作品は「高山虎嘯風雲起」。高い山でトラがほえ、風雲が湧き起こる情景を表した漢字7字を縦3メートル、横約3・6メートルの紙に書いた。勢いよく筆を運びながら直線的でキレのある信山流特有の書風で表現。力強く、構成にも配慮を行き届かせた大作に仕上げた。数カ月かけて原案を練った上で、休暇に自宅近くの公民館を借りて100枚近く書いた中から選んだという。
大島さんは8歳で書道を始め、大東文化大学在学中から信山に師事した。「作品にはとにかく厳しい先生だった。襟を正し、緊張感を持って臨んだ」と直筆の手本をもらって練習した日々を振り返る。一方、ひとたび稽古を離れれば「学生とも和気あいあい触れ合う人間味あふれる先生だった」。直門の多くが高齢化する中「信山書風をしっかりと引き継ぎ、発展させていきたい」と話す。
書象展は昭和37(1962)年に始まり、会場が国立新美術館になって以降、若手や中堅に大作の挑戦機会を与える俊英選抜展が同時開催されるようになった。毎年、会長や理事長ら役員が5人を選抜する。今年は信山書風の源流となる中国の書家・張廉卿の生誕200年の節目でもある。大島さんは「信山書風といっても個性はさまざま。ぜひ奥深さに触れてほしい」と話している。