連載・特集

2023.6.8 みすず野

 雑誌『ブルータス』最新号の見出しは〈いまこそ、カクテル〉だった。〈事実上の禁酒令〉下でも研さんを怠らなかったバーテンダーたちが、しのぎを削る。色とりどりに素材も豊かでおいしそう。ノンアルコールのラインアップも充実している◆知らない土地でバーを探すのは旅の楽しみだ。1軒目はビールや日本酒...次は大勢なら居酒屋やカラオケへなだれ込むだろう。独りか、親しい少人数連れのときは(財布の中身にもよるが)カクテル。甘い酒が苦手なのと他に知らないので、いつも「マティーニを」と言ってしまう◆松本はバーの街である。常連というほどではないが、つい足が向く店があった。生き残っているかしら。そんな話題は紙面であまり見なかったように思う。酒なんか飲んでる場合じゃない...うまく付き合えば、欠かせない人生の師友なのに◆すっかり家飲み派になった方もおられよう。缶のレモンサワーもおいしいけれど、薄暗い店内でグラスの縁をなめる幸せは他に代え難い。バーテンダーから「ちょっと変わったマティーニを作りましょうか」などと言われたら、なおうれしい。久しぶりに扉を押してみよう。