連載・特集

2023.6.30みすず野

 お祭りで男衆がふんどし(褌)を着けるのは、みそぎを済ませて心身が清らかになったと示すためだろう。素人なりに推察できる。褌を巡る書籍が図書館の本棚に何冊かあった◆年配の読者に笑われるかもしれないが、褌は戦後しばらくまで普通の下ばきだった。「フジヤマのトビウオ」こと古橋広之進選手も本番でこそ規定の水泳パンツをはいたが、競技の後に撮られた写真は褌姿だ。やがて下火になっていく褌は祭礼の場で命脈を保つ。晴れ着や正装とも言える(『ふんどしニッポン』朝日新書)◆松本市島立の「裸祭り」で今年は子供たちの練り歩きが行われる―記事で読み、ほっと胸をなで下ろす。3年続きの中止で果たして伝統が継承できるかと小欄も昨年、地域の人と共に心配した。水着やスパッツの上に褌を巻く。スタイルは変わるけれど、裸でなくとも牛頭天王は疫病退散の願いをきっと聞き届けてくれる◆きょうは近くの神社へ茅の輪くぐりに出掛ける方もおられよう。半年のけがれを落とし、残り半年の無事を祈る。7月2日は島立にある小社で元気のいい「オンヤーサー、モンヤーサー」の掛け声を楽しみに待ちたい。