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「医は仁術」掲げ6代200年 本洗馬・熊谷医家の歴史、本に

熊谷医家「生々堂」を訪れ、現当主の進さん・啓子さん夫妻に『医は仁術』を披露した中原さん(左)

 塩尻市立本洗馬歴史の里資料館の元学芸員・中原文彦さん(70)=洗馬=が、本洗馬の熊谷医家「生々堂」の6代200年に及ぶ歴史をまとめた『医は仁術~本洗馬村熊谷家六代の系譜』(龍鳳書房)を出版した。幕末に信州初の集団種痘を導入した3代目珪碩・4代目謙斎父子や、昭和期に結核予防に貢献し「結核の神様」といわれた6代目岱蔵ら、優れた人材を輩出した熊谷家の歴史と背景に迫った。

 全6章構成。2章では江戸時代中期に熊谷家の婿となって医業を始め、紀行家・菅江真澄と交流した初代・可児永通に焦点を当てた。3章では珪碩・謙斎父子の活躍、4章は文化勲章を受章した岱蔵の功績をまとめた。
 5、6章では信州の僻村にありながら、偉業をなし得た熊谷家の思想「医は仁術」を取り上げ、代々遠地に留学して最先端の医療水準を維持したと考察。熊谷家を取り囲む洗馬の文化水準の高さや、国内の文化人との幅広い交遊関係にも言及した。巻末には6代の詳細な年表を添えた。
 中原さんは学芸員時代、熊谷家に関する企画展や講演を担当、古文書や講演記録、著書などを調べた。岱蔵の孫で、現当主で医師の進さん(84)=東京都目黒区=は「先祖の全容を明らかにしていただき、ありがたい」と話す。
 信州洗馬文化史シリーズの第2弾となる。中原さんは「全国に誇る熊谷医家の業績を知り、先人の生き方や姿勢をくみ取ってほしい」と話している。
 A5判190ページ、一部カラー刷。定価1540円。本洗馬歴史の里資料館や平出博物館などで扱っている。

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