地域の話題

山蚕の文化継承願い展覧会企画 松本地域の農家・染織家・研究者一丸

展示を予定する天蚕の繭や織物を広げる本郷さん

 古くより山蚕の呼称で親しまれてきた野生の蚕、天蚕の飼育や製糸、美しさを引き出す織りなど一連の文化を紹介する展覧会「私たちの天蚕ものがたり」が22~31日、松本市大手3のギャラリーノイエで開かれる。松本地域の天蚕農家や染織家、研究者らが発足させたヤマコプロジェクトが初めて企画。糸のダイヤモンドと称されながらも希少ゆえに知らない人が少なくない中、文化の継承を願って天蚕から生まれる素材や仕事を発信する。

 一般に養蚕で知られ桑の葉で飼育する家蚕は品種改良によって年3~4回糸が取れるが、天蚕はクヌギやナラの葉で育ち糸が取れるのは年1回。製糸できる量も少ない。ただ天蚕の繭は翡翠のように美しく発色し、精錬過程で萌黄色になる糸には特有の艶や光沢、丈夫さがある。全国でも数少ない総天蚕の織物を手掛ける、本郷織物研究所(松本市清水1)の染織家・本郷孝文さん(79)は「人工では決して出せない天然の美しさ」と話す。
 本郷さんや安曇野市穂高有明の天蚕農家、古田清さん(77)春江さん(75)夫妻、信州大学の研究者らがプロジェクトを立ち上げたのは数年前。歴史を江戸時代にさかのぼりつつも今では飼育農家が限られ、素材の魅力を存分に引き出せる作り手も少ない中、育てる人や糸を作る人、織る人、産業を支える人が協力し合う活動をと構想し、ホームページを立ち上げるなどして情報発信に努めてきた。
 展覧会では一連の過程や実際の繭、糸、織物を展示し、24、30日に関係者の対談会も開く。「まずは天蚕を知ってもらう機会に」と春江さん。本郷さんは「地道な取り組みの中から後継者が生まれてくれば」と話している。午前10時~午後6時で入場無料。