連載・特集

2023.5.22みすず野

 「東京スカイツリー」は平成24(2012)年5月22日に開業した。すぐに行きたかったのだが、テレビが映す混雑ぶりに恐れをなして思いとどまった。何年後かについでがあった時は強風で...展望台へ昇らないまま11年がたった◆安房トンネルも平成9年の開通時に行こう行こうと言いながら、初めての通過はかなり後だったと記憶している。機会がなかったといえばそれまでだが、自らの意志で行動を起こすには相当の熱量が要ると思う。いつでも行ける、何かのついでに―だとなかなか実現しない◆『岡本太郎と太陽の塔』(小学館クリエイティブ)が大阪万博に懸けた芸術家の熱量を伝える。岡本は「人類の進歩と調和」というテーマに抵抗を感じた。確かに科学技術の進歩は目覚ましい。でも、それが〈人間的・精神的な前進〉を意味するかは疑問だ。技術の粋を集めた大屋根を〈ベラボーなもの〉で突き破ってやろう―まさに「爆発」だった◆岡本が突きつけた問いの重さは今日、少しも変わっていないどころか、むしろ増したと映る。半世紀を経て大阪万博の幕が開く2年後、私たちは「どうしても行きたい」と思うだろうか。

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