連載・特集

2023.5.1みすず野

 青空と山並み、森...下半分が赤紫色に染まる。詩/さだまさし・絵/原田泰治『れんげそうの詩』(講談社)の一点は題が「ふるさとの思い出」だから、原田さんが少年期を過ごした下伊那郡伊賀良村(現・飯田市)の風景だろうか◆レンゲソウが好きなので小欄に年1度は取り上げる。れんげ米を作る南安曇農業高校の第2農場へ行くと、何日か前にすき込んだ後だった。今年は何でも早い。花の盛りに散歩で通りがかった住民が「いよいよ(田起こしや代かきが)近いね」と声を掛けてくれるという。レンゲ田の眺めは今も安曇野の人たちの心を彩る◆国営公園では、職員から「かつて取り組んだことはあるが...」と返ってきた。見頃と田植え準備の時期が重なり、秋の大雨で発芽前の種が浮いたり片寄ったり...うまくいかなかった。そもそもが花を楽しむものではなく、機械がなかった牛馬の時代の緑肥である。郷愁から懐かしの風景を取り戻そうと、口で言うのはたやすい。それでも、なんとかならないかと思うのだ◆絵に添えられたさださんの詩も良かった。〈泣きたい時こそ笑え/苦しい時こそ笑え/信じていい/強い夢は叶う〉