2023.4.5みすず野
三好達治は〈ゆるやかに白い雲の飛ぶ/春の日はしぼりたての牛乳のやうだ〉とうたった。きょうは〈太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ〉で知られる詩人の昭和39(1964)年の忌日。63歳だった◆信州との縁も深い。軽井沢の山荘で浅間山の噴火に遭遇したり、志賀高原の温泉で療養して詩作したり(『長野県文学全集』)している。昭和5年、白骨温泉にこもってファーブルの『昆虫記』を翻訳した。出版社から翻訳料が届かず〈文なし〉となり〈松本市のどこやらで一晩ヤケ酒をあおった〉『作家の自伝95』◆三好の冒頭の詩句に続く〈まつ青な空の下で〉気温がぐんぐん上がり、各地で花が咲き急ぐ。植物に詳しくなくて恥ずかしいが、モクレンの花は桜の後でなかったろうか。ともかくこう一遍に見頃を迎えられたのでは紙面が追い付かない◆71歳で帰らぬ人となった音楽家・坂本龍一さんを悼む記事に、好きだったという「芸術は長く、人生は短し」の言葉が添えられていた。ページの縁が黄ばんだ三好の詩集を手に取るにつけても、本当にそうだな~と思うことしきりである。