2023.4.14みすず野
志賀直哉の短編「真鶴」は題名の通り、神奈川県の小田原から真鶴への〈深い海を見下す〉高い道が舞台だ。へさきに〈赤々と火を焚〉く漁船や〈岸を洗う静かな波音〉が描かれる◆石橋山の戦いにまつわる古跡を伝える真鶴町は、旧堀金村と親善提携を結んでいた。小学生の相互訪問や、大型バスを乗り付けてのリンゴの収穫は取材したり紙面で見たりした覚えがある。「山と海の交流」は新市へと引き継がれた。豊科の本庁舎入り口で来庁者を迎える「安曇野市役所」の銘板は町特産の「本小松石」だ◆海を毎日見られるとか魚介がおいしい―と思うかもしれないが、海沿いで育った身からすると車は早くさびるわ、蒸し暑いわ―やっぱり山国のほうが断然いい。逆もしかり。自治体の姉妹・友好交流は互いに憧れを募らせ、住民間の学び合いや行き来を促すとともに、ふるさとの良さをあらためて知る機会となるだろう◆きょう付の情報面で隔週の連載「探訪!フレンドタウン」を始めた。地名は知っているけれど行ったことのない街も多い。かの地の歴史や自然、特産物に思いをはせ、ひととき旅気分を味わってもらえたらうれしい。