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原田靖子さん万感の退任演奏 松本・音文ホール専属オルガニスト

パイプオルガンの前でプログラムの楽曲を解説する原田さん

 松本市音楽文化ホールのワンコイン演奏会「夜オルガンVol.13」が10日夜、同館主ホールで開かれ、今月末で退任する専属オルガニストの原田靖子さんが東日本大震災の復興を願う大曲など5作品を奏でた。第4代オルガニストとして平成26(2014)年に着任して9年。この間原田さんに出会い、音楽に魅了された市民ら約500人が客席を埋め、実質的な退任演奏に万雷の拍手を送った。

 プログラムは、柿沼唯氏や近藤岳氏ら現代日本の音楽家によるオルガン曲で構成。「日本に生まれ育ち、日本語を話す自分にとって同じ風土に生きる音楽家たちの言葉はやはりしっくりくる。もっと伝えたい」と原田さん自身がえりすぐった。福島県相馬、会津両地方の民謡を主題とする「相馬流山・会津磐梯山によるラプソディー《~未来へ!》」は東日本大震災の復興を願う連弾曲で、3・11を前に、祈りにも通じる神聖な響きが会場を満たしていた。
 夜オルガンは一日の終わりに約1時間、良質な音楽を500円で楽しめる演奏会として着任の年から継続されてきた。コンサートホールになじみの薄い客層も親しみを持てるように―と奏者自身による作品の解説も人気だった。来場した安曇野市の西垣恭子さん(74)は「今日が最後と聞きどうしても来たかった。思いの伝わる素晴らしい演奏で感激した」。原田さんと園児の交流があった島内保育園の羽山真由美園長(57)は「音楽を通じていつも子供たちを思ってくださった。感謝でいっぱいです」と惜しんだ。