連載・特集

2023.3.5 みすず野

 「投稿フォトプラザ」に送られてくる写真に、花を撮影した作品が少しずつ増えてきた。福寿草やオオイヌノフグリ、サザンカなどがくっきりとした色と輪郭で捉えられている。季節が動き始めていると教えられる◆結城昌治さんの『俳句は下手でかまわない』(朝日文芸文庫)には久保田万太郎の春の句が紹介されている。「あたたかきドアの出入りとなりにけり」は、いままではドアを開けるたびに寒い風が入ってきたのにこのごろは風が暖かくなってきたという、いかにも春めいてきたという感じがする句◆「春の夜のすこしもつれし話かな」は、小説の一部のような、芝居の一場面のような趣がある。「こういうのは万太郎が得意としていた句で、人情の濃い下町の人間付き合いのおもしろいところをひょいとつまんで句にした感じ」と解説する◆「花の句といはれていつも書く句かな」。俳句で「花」といえば桜。花の句を色紙か短冊に書いてくれと頼まれたが、いつも書く句が決まっている。「苦笑しながらそのことを句にした」のか「その句が得意」だったのか。フォトプラザに桜の写真が送られてくるのはいつになるだろう。

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