2023.3.18みすず野
家の近くの観光施設に店を開くカフェは、土日に限りモーニングサービスがあった。バイキング形式で、パンやサラダ、カレーなど種類が豊富で、週末が楽しみだった。コロナ禍でサービスを中止したままだが、そろそろ再開するかもしれない◆作家の片岡義男さんは、昭和38(1963)年、初めてモーニングサービスを知った。コーヒーのほかにトースト2切れ、金属製の容器に入ったゆで卵、バターを四角く切ったものなどが直接皿に置いてあった。「これが早朝の客へのもてなしなのだと(中略)状況のぜんたいは正しく理解することが出来た」(『僕は珈琲』光文社)と◆コーヒーを味わう人が、カップを手に新聞を読む姿は、それぞれが絵になるように思うがどうだろう。京都の老舗・イノダコーヒーでも、こうした年配の男性が何人もいて、なかなかいい雰囲気があった◆バイキングの店で、コーヒーに口をつけようとすると、後ろのテーブルに着いた年配の男性二人が、その日の朝刊を手に新聞批判をあれこれ始めた。いちいちもっともな内容なだけに耳に入ってくる。その朝はコーヒーの苦みだけがいつもより強く残った。