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念仏、数珠回しで先祖供養 木曽町 川上正沢の伝統行事

折り目正しく列になり、かねを打ちながら歩く「行道」で入場した

 木曽町福島の川上正沢地区で20日夜、町の無形民俗文化財に指定されている川上正沢念仏講の伝統行事「ねはん念仏」が行われた。皿状のかねを打ち鳴らしながら念仏を唱え、先祖を供養した。地域が一体となり、口伝で伝統を紡いでいる行事を〝取材〟する学識経験者の姿もあった。

 川上正沢公民館に集まった住民や来賓20人余りが見守る中、まず、不動や釈迦、文殊など13の仏に対してかねを打った。列になってかねを打ちながら歩く「行道」で入場し、先導「申す人役」が念仏「場引」を唱えた。住民ら全員で大数珠を回す「百万遍念仏」も合わせて行われた。
 川上正沢念仏講では、以前は旧暦の2月15日に毎年「ねはん念仏」を行っていた。同様の風習は各地に残っていたが時代とともに廃れ、師匠から口伝えで伝承された習わしが残る地区は川上正沢地区以外ほとんどないという。この日の念仏講に参加した、上松町栄町出身で社会学などが専門の佐幸信介・日本大学法学部教授は「口承文化の世界が残っていることがすごい。伝えられていることにまず価値がある」と話していた。
 念仏講は300年前には存在していたことが確認できるという。「申す」(唱える)役割は地元の小桂成人さん(65)が1人で務めている。小桂さんは「『師匠から弟子へ口伝えで残されてきたものはいいもんだぞ』と話してくれた先輩の言葉が『のめり込んだきっかけ』」と懐かしみ「自分の場合は『好き』という思いが全てだった。まずは興味を寄せてもらうことが第一かも」と話し、新たな担い手の誕生にも期待を寄せていた。