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兎川寺町会のお船が改修完了 松本・里山辺

住民の前に再び雄姿を見せた兎川寺町会のお船

 松本市里山辺の兎川寺町会が継承する県宝のお船の全面改修事業が完了し、よみがえった雄姿が20日にお目見えした。江戸後期、天保初年ころの築造とされ、改修は昭和3(1928)年~4年以来、ほぼ1世紀ぶりという。住民の絆を深めながら5月に、地元の須々岐水神社の例大祭でえい航される。

 お船は全長約8メートル、高さ約5メートル。仙人や宝づくし、竹に虎など縁起物の彫刻のほか、擬宝珠柱には鶴と亀の飾り金具が、2階外縁には螺鈿が施されるなど意匠を凝らした造りが見事だ。改修は一昨年に着手し、解体や洗い、漆の塗り直し、欠損修理などが行われた。本体工事費は2300万円で、各戸の積み立てに加え、市と県の補助金を活用。これとは別に幕一式も新調した。
 塩尻市木曽平沢の漆器店や岐阜県高山市の宮大工に出されていた部材が地元に戻り、19日から組み立てが行われた。20日は町会内の船倉前で最終の調整作業があり、お祭り保存会や町会の役員、地元の有志ら約30人が参加。修復を担った八野大工(高山市)の八野泰明社長(46)は「昔の人々は競って立派なお船を造ったのだろう。同じものは二つとない」と話していた。
 中村弘幸町会長(70)は「一連の改修を通じ、立派なお船を守り抜いてきた人々の努力と熱意にあらためて触れた思いがした。地域の結びつきの強さはお船のおかげなんだなぁ」と感慨深げだった。