右左折の合図を早く出そう まつもと道路交通考・第3部①目立つウインカー軽視
松本地域では車が右左折時などに出す合図(ウインカー)のタイミングが遅いということが、県外ドライバーや移住者などからしばしば指摘される。松本地域に限ったことではないが、暗くなっても前照灯(ヘッドライト)をつけずに走る車も少なくない。交通事故防止のために、灯火類を適切に使った運転を心掛ける必要がある。
県警によると、令和5年に県内の交差点で発生した交通事故は計2370件で、全体(5006件)の47.3%を占めた。交通安全の推進には交差点での事故防止が課題となっており、車が右左折などの動きを周囲に知らせる合図を適切に出すことが不可欠だ。
道路交通法は車の合図の出し方について、右左折は「交差点の手前30メートル地点から」、進路(車線)変更は「変更を始める3秒前から変更が完了するまで」と定めている。
実際はどうなのか。市民タイムスは今月、松本市の国道19号高宮交差点(片側1車線)と国道158号合同庁舎入口交差点(片側2車線)で、右折のために右折レーンに入った車200台の合図の出し方を目視で調査した。
その結果、右折レーンに入る際に必要な進路変更の合図を出さなかった車は、高宮交差点が135台(67.5%)、合同庁舎入口交差点が121台(60.5%)で、いずれも6割を超えた。赤信号で右折レーン内に停車した車が合図を出していないケースが目立ち、発進直前や右折の間際になって合図を出し始める車が各交差点で3割近くあった。合図を出さないまま右折した危険な車も高宮交差点で1台、合同庁舎入口交差点で3台あった。
一方、市民タイムスが1月に実地調査した東京都中野区の都道南台交差点(片側1車線)では、右折レーンで停車中に合図を出さない車は186台中わずか9台だけだった。都内では右折待ちの停車中でも合図を出し続けるのが一般的で、松本地域の「合図軽視」ともいえる状況と大きく異なっている。
東京都から25年前に移住してきた米澤章雄さん(78)=安曇野市穂高有明=は、松本地域では右左折の合図の遅れや出し忘れ、出し惜しみがよく見られるといい、「自転車の子供や歩行者を守るためにも合図はしっかり出して」と訴えている。
ドライバー心理や交通事故防止対策に詳しい日本交通心理学会の蓮花一己会長(71)=帝塚山大学名誉教授=は、松本地域の「合図軽視」について、片側2車線道路の少なさなど道路環境の貧弱さが影響している可能性を指摘し、「合図を重んじた運転を心掛けてほしい」と話している。
県警の渡澤竜一交通安全対策室長も「交通事故防止のため、法令で定められた通りに合図を出してもらいたい」と呼び掛けている。