祖父母の店を孫が記録 もうすぐ閉店・フルーツやまだで伊藤栞さん撮影中

「祖父母の店の記録を残したい」―。今月末で半世紀の歴史に幕を下ろす松本駅前の果物店・フルーツやまだ=松本市中央1=で、経営する山田一宇さん(82)、のり子さん(76)夫妻の孫・伊藤栞さん(20)=東京都=が最後の日々を撮影している。取り組みを通して、祖父母の仕事への愛情を再認識したといい、2人の思いまで映像に収めたいと臨んでいる。
伊藤さんは、夫妻の長女・恵子さん(50)の長女で、日本大学芸術学部映画学科撮影録音コースの2年生。10分間ほどのドキュメンタリー映像を制作する課題の中で取り組んでいる。
撮影は昨年末に始めて週末を中心に通い、これまでの計20日間ほどカメラを回してきた。開店から閉店まで密着したり市場で競売に参加する様子を撮影したりして「競売で勝った時のうれしそうな顔など、見たことのない姿に触れている」と新鮮さを感じている。家族だんらんの場を撮影した時は、ふとした会話の中から、商売一筋に励んできた祖父の本音が垣間見え「おじいちゃんの人生を知る機会になった」と重みを感じている。
だいぶ片付いてきた店の中で一宇さんは「孫が記録を残してくれるってのはいいものだね」と喜びつつ「だけど閉店はやっぱり寂しい。閉店後も早く目が覚めちゃうっていう仲間は多い。自分も同じかも」と、最後の日に向けて仕事に励んでいる。