連載・特集

2025.1.27 みすず野

 卵(玉子)酒は冬の季語で「酒に卵と砂糖を加えて火にかけ、酒精分を飛ばしたもので、子どもでも飲める。風邪気味の時に飲む」(『合本俳句歳時記』角川書店)とある。滋養があって、古くから風邪の民間療法として伝えられてきたとも記されている◆農学者、発酵学者の小泉武夫さんは「小学三年生の冬、風邪を引いたとき初めて母が作ってくれた卵酒を飲んだのですが、あまりの旨さに徳利1本分をペロリと飲んでしまい『お替り!』といったら叱られた思い出があります」(『たまごだいすき』中公文庫)と楽しそうに書かれている◆さらに、酒に卵を入れて飲むという風習は、韓国やヨーロッパでもみられるという。全ての国に共通しているのは、卵酒は風邪治療のために飲まれていることで「疲れたときや、なかなか眠れないときなどにもおすすめ」なのだと◆同じように子どもの頃、風邪をひき、卵酒を作ってもらったが、なぜか飲めなかったことをよく覚えている。それからはもう二度と勧められなかった。今ならいくらでも飲めるのに。歳時記にはこんな句があってうれしくなった。「志ん生の火焔太鼓や玉子酒」(加藤潤)