連載・特集

2025.01.03みすず野

 「おせちもいいけど、カレーもね」という、レトルトカレーのテレビコマーシャルが最初に流れたのは、1970年代後半。女性3人のグループ、キャンディーズが出演した。年末から三が日にかけて盛んに流れていた記憶がある◆これはなかなか説得力のあるコピーだった。がんがん食べられる若いころは、塩辛い味のちびちびしたようなものだけでは飽きてしまうし、餅だってそう何食も続かない。ではこのカレーを食べたかというと、そんなこともなかったような◆歌人で作家の東直子さんは「なぜかカレーが嫌いで仕方がない、という人に出会ったことがない」と昨年末に発刊されたばかりのエッセー・アンソロジー『カレー記念日』(中公文庫)に収められた「抗いがたきカレーの香」に書く。食べ方もいろいろある。「お皿に盛りつけたあと、わたしはしょう油を少しかける。大阪にいたころ覚えた方法」なんだとか◆カレーは「家庭の数だけ味がある。隣りはどんな香りを煮つめていることか」。そしてこう短歌を詠む。「叔母さんが若かったとき食べました二階の部屋で黄金のカレーを」。さて、お昼はカレーにしましょうか。