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安曇野市天蚕振興会の会長 田口忠志さん 蚕糸功労賞を受賞 後継者の育成評価

太田市長に蚕糸功労賞の受賞を報告する田口さん

 安曇野市の穂高有明地区で伝統工芸「穂高天蚕糸」の保護や後継者育成に取り組む市天蚕振興会の会長・田口忠志さん(77)=穂高有明=が、大日本蚕糸会(総裁=常陸宮正仁さま)の本年度蚕糸功労賞を受賞した。天然の蚕「天蚕」の飼育に取り組みつつ、振興会長として8年にわたって飼育者や織り手の育成に努めていることが高く評価された。

田口さんは養鶏会社を定年退職後、同振興会の会員に誘われて平成24(2012)年に会員となった。子供の頃は、穂高有明の自宅近くにあった県天蚕試験場の飼育林が遊び場で、天蚕に親しみがあった。飼育部員として天蚕繭の増産に取り組み、副会長を経て29年に会長に就いた。
 高齢化などで飼育部員が実質的に3人に減るなか、振興会で生産される天蚕繭の4割に当たる約6000粒を生産している。飼育は難しく、幼虫が繭を作る前に病気で死んだりサルの食害に遭ったりするため、繭を収穫できるのは3~4割程度だという。着物文化の衰退で天蚕糸の需要も減っており、会長としてさまざまな活用方法も模索している。
 19日に田口さんが市役所で太田寛市長に受賞を報告した。太田市長は「天蚕は安曇野市の誇り。もっと広めないといけないが、問題は生産量」と現状を捉えつつ、田口さんの受賞をたたえた。田口さんは取材に「何とか後世につなげるため、微力ながら頑張っていきたい」と語った。
 蚕糸功労賞は、養蚕農家の模範となって地域のリーダーとして貢献した人や蚕糸振興に寄与した人などが対象で、本年度は全国で16人が受賞した。市内の受賞者はいずれも同振興会会員で、田口さんが5人目になる。