2024.12.26 みすず野
『あの映画に、この鉄道』(川本三郎著、キネマ旬報社)を読んでいたら「長野県を走るローカル線にアルピコ交通上高地線がある。以前の名称は松本電鉄上高地線」とあった。「この鉄道に乗ったのが、富田常雄原作、川島雄三監督『女は二度生まれる』(61年=昭和36年)の芸者、若尾文子」と続く。興味を引かれてこの映画のDVDを買って見た◆暮らしに疲れた彼女が、故郷の信州に帰る途中、一人で終点の駅の待合室に入るところで映画が終わる。この駅は、新島々駅の一つ先にあった島々駅。昭和58(1983)年の台風災害で廃止となったことが書かれている◆島々駅は平成3(1991)年、当時の波田町が新島々駅向かいに復元した。町観光案内所として建設され、松本市と合併後も使用されたが、一昨年解体された◆映画では残念なことに、島々駅の全体は見られないが「しましま」と書かれ、駅舎の緑色の柱に掲げられた駅名の青いプレートが何度も映る。駅入り口には郵便ポストがある。復元された建物には取材で何度か足を運んだ。この映画の存在を知っていたら、建物を紹介するような記事が書けたかもしれない。